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『巡幸の半女神/新井円侍』 感想

巡幸の半女神』 試し読みページ(上から4番目)

著/新井円侍 イラスト/こにしひろし

巡幸の半女神 (講談社ラノベ文庫)
新井 円侍
講談社 (2013-08-02)
売り上げランキング: 99,655

ジャンル:ダークファンタジー・巨大ロボット

個人的評価(面白さ):☆7(8段階中)


新井円侍が帰ってきた。

前作『シュガーダーク』は紛れも無い傑作だった。

しかし1巻のあとがきで「出せそうだ」とされた2巻は出なかった。

(本人は「自分に99.9%非がある」と書いている)

絶望の淵から、最後には幸せが明確に見えてきた物語だっただけに、多くの人が物語の続きを待っていたはず。

私もずぅぅぅっっっっと待っていた。

(・・・けど、2巻があったとしたら、登場人物は一新されていたそうだ)

読んでいて、物語に体の感覚を隅々まで奪われる/支配されているような感覚になったのは

シュガーダーク』が最初で最後だったから。

あの衝撃/感覚にまた会いたい。また味わいたい。そういう想いもあった。

でも、それもこの『巡幸の半女神』を読めばなんとなし。

新井円侍は帰ってきた。


彼のブログを見る限り、話の書き方も分からなくなるほど悩んで(?)いたそうだ。

そんな彼が帰ってきたのだ。彼の書く新しい物語をまた読んで、「体感」できたことが嬉しくて嬉しくてたまらない。

と、言いつつも彼が復活していることを最近まで知らなかった。情けないことに。

そして、この記事を書くにあたって新井先生のブログをあらかた読み直したという。認識間違いとかあったらまずいので。実際下書きの時点ではありました。危なかった。


・・・あらすじっぽいもの。

大人向けの童話のような、やっぱり『ダーク』な話。

舞台は西暦2232年。23世紀。

こうかくとトンデモSFの世界が浮かぶけど、そうじゃない。

人類は2100年代までは繁栄していたそうだ。その時は近未来的な世界に発展していた。

しかしそんな世界に”神”が現れた。”神”は世界の都市を滅ぼした。

生き残った人類は100分の1程度。さらにそれに追い打ちを掛けるように、巨大昆虫が現れた。

人より大きい巨大アリ、人より大きい巨大バッタ・・・。

巨大昆虫は食べるでもなく、人々を殺す。

巨大昆虫はとても大きく、チカラも強大で混乱の最中にあった人々に抗う術は無かった。

次第に人々は地表から姿を消し、地下に隠れ潜むように暮らしていったそうだ。

そして、そんなことが当たり前になった2232年。

・・・・・

男が目を覚ますと、目の前には金髪緑眼の美女。

身体が焼けるように痛い。意識も薄い。

目の前のこいつは誰だ・・・・・。そして・・・自分が誰なのかも分からない・・・。

・・・感想

なんだろう。こう、お伽話というか、童話を読んでいるような感覚があった。

それだけ幻想的な風景が頭に浮かんで、さらには幻想的な気分・雰囲気にさせる文章があった。

ここで私がいうお伽話のイメージとしては、安心して落ち着いて読める。いつの間にか物語に熱中している。そんな感じ。

いつの間にか話に没入しているというか、物語に自分が取り込まれるような。すごく好き。

ただ、一般的なお伽話や童話というのではなく、その世界は絶望に包まれている。

そんなお伽話。

「文字で表現する」ことが上手い。

改行の仕方や間のとり方など。すごく意識されて書かれているんだろうなと感じた。

見ているのは文字だけなんだけど、それ以外の何かも読み取れる。こうなると「読む」というより「体感」と言いたくなる。

最初に書いた『「体感」できたことが嬉しくて嬉しくて』、というのはこういうこと。

あとは割りと壮大そうで緻密そうな世界観。世界は“神”に滅ぼされかけ、その崩壊寸前の世界を支配しているのは巨大昆虫ども。

“神”にどうやって抗うのか、巨大昆虫は人類がギリギリ創った兵器でなんとか出来るんだけど、まだ多勢に無勢。

簡単には勝てない。“神”は言うまでもなく圧倒的。今の人類では勝てない。

これをどうやって彼らが乗り越えていくのか・・・。1巻からその辺りは出てきていて、当然ながら普通に戦っても勝てないわけだから、頭を捻って出したような戦い方になる。

これは幻想的な雰囲気とはまた違うけど、主人公をはじめとする人類がどれだけ不利な状況にいるのか暗に示しているように感じたし、奇想天外な展開にも繋がっていて面白かった。

「言葉」も意識されていると感じた。

これがあるからダークなお伽話や童話を読んでいるように感じるんだと思うんだけど。

漢字なんかも滅多に出てこないようなものが次から次へと出てきて、つっかえるんだけどこれがどう読むのか考えるのが意外と楽しかったり。

出てきたものを幾つか挙げると。

励起(れいき)

芥子粒(けしつぶ)

殺ぐ(そぐ)

誅戮(ちゅうりく)

眦(まなじり)

面頬(めんぼお)

慄き(おののき)

犇く(ひしめく)

揮う(ふるう)

まだまだあるけど切りがないのでこれぐらいで。

芥子粒と眦、揮うは読めませんでした。

イラストは、表紙より口絵、口絵より挿絵の方が良いかな~と思いました。

もちろん表紙から好きですが、挿絵はものっすごく好きです。

その表紙、口絵、挿絵も試し読みで表紙と口絵は全て、挿絵は1枚見れるので是非どうぞ。

記事一番上のところにリンク貼っているのでそこからお願いします。


この1巻が8月刊なので、2巻がちょうど11月末に出ました。

作風がとても好きなのと、新井さんを応援したいので2巻も(積み本80冊近くあるのに)近日中に買おうと思ってます。

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